よつば通信
遺言による相続登記の手続きと必要書類
不動産を相続して名義変更する相続登記を行うには、遺産の分割方法によって異なる手続きが必要となります。
ここでは、遺言書による遺産分割の際の登記手続きのあらましを紹介します。
不動産の相続登記には、遺産の分配に応じて異なる方法がある
亡くなった人(被相続人)の財産を相続する際、自宅などの不動産が含まれていれば、その名義を相続人に変更する必要があります。これを相続登記と呼び、相続人に名義が変更されることで、必要に応じた不動産の売却などを行うことができるようになります。
相続登記には、相続の分配の方法によって、三つのケースがあります。
まず一つ目が、法定相続分どおりの相続登記です。法定相続人には、法律によって一定の相続の割合が決められています。
一例を挙げれば、被相続人に配偶者と子どもが二人いたとすると、この三人が法定相続人となります。このとき、配偶者には全財産の1/2、残りの1/2を子ども二人で均等分割するという形です。
もう一つのケースとして、相続にあたって分割協議を行い、上記の法定分割によらない割合で分割して相続する方法もあります。この場合、相続人全員の合意の下で遺産分割協議書を作成します。
いずれのケースも、不動産に関しては、相続人のうちの一人が単独相続する場合と、複数の相続人によって共同相続登記を行う場合があります。遺産分割協議がまとまれば、共同相続登記の状態を解消して、一人の相続人による単独名義とすることが一般的です。
相続に携わる権利や義務を保護するための法的効力を持つ「遺言書」
上記以外のケースとして挙げられるのが、「遺言」による相続の分配およびそれに伴う相続登記です。
そもそも遺言とは、死後においての希望や生前のお礼などを意思表示として遺しておくものです。
この遺言の内容を法的に有効な形としておいた書面を遺言書と呼び、これは民法の規定に則った法律文書として認められるものです。この書面によって、相続に携わる権利や義務を保護することとなります。
遺言書は、公証役場で作成した公正証書遺言書と、被相続人自身が書いた自筆証書遺言に分類されます。前者は、作成した時点で法的な効力を持つ文書として認められます。
後者は、家庭裁判所での検認手続きを経て法的な拘束力が発生します。検認手続きには、遺言書の写しとともに、申立書・申立人及び相続人全員の戸籍謄本・遺言者の戸籍謄本等(出生から死亡までの記載のあるもの)を提出します。
この手続きを経なければ、相続された不動産の相続登記(名義変更)に効力を発揮する遺言書とはなりません。
遺言書による遺産分配の指定と相続登記の方法
遺言書によって不動産の相続上で規定できる内容は、主に「相続に関すること」「身分に関すること」「財産の処分に関すること」に区分できます。
「相続に関すること」では、相続人の指定(相続人の廃除を含む)や法定相続とは異なる配分での相続の配分を規定などが挙げられます。
「身分に関すること」では、法律上の婚姻関係にない男女間の子ども(非嫡出子)の認知などが含まれます。
また、相続人が未成年である場合の後見監督人の指定や、遺言執行者の指定を行うこともできます。
遺言執行者とは、子どもの認知や相続人の廃除・取消(これらは、遺言執行者のみが執行可能)、後述する遺贈の執行など、遺言書の内容を実現する人を指します(遺言書による遺言執行者の指定がなければ、相続人は家庭裁判所に選任の請求をすることができます)。
これらの規定がなされた遺言書による相続では、遺言書とともに被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)、相続人の戸籍謄本・住民票、不動産の登記簿謄本・固定資産評価証明書を法務局に提出し、不動産の相続登記を行います。
相続人以外に財産を受け継がせるには、遺言書での遺贈の指定が必要
相続登記の際に注意を要するのが、遺言書の三つ目の規定内容である「財産の処分に関すること」です。
遺言状で遺産を受け継がせるためには、「相続」の他に「遺贈」という方法があります。両者は、相続登記において明確な差異があり、相続させる側(被相続人=遺言書の作成者)、相続する側の双方とも注意を要する内容なのです。
相続とは、法律上の相続人(=法定相続人)に財産を引き継がせることです。一方、法定相続人以外に財産を引き継がせる際に用いるのが遺贈であり、この方法でしか、財産の全部もしくは一部を無償で法定相続人以外の第三者に贈与(譲渡)することはできないのです。
相続される財産が不動産の場合、遺贈を受ける人(=受遺者)は不動産を自分名義に変更するため、遺贈による所有権移転登記を行わなければなりません。
遺贈は、遺言書によるものであっても贈与の一種とみなされるため、その登記には受遺者と登記義務者(遺言者の相続人全員もしくは遺言執行者)との共同申請が必要です。
遺贈による所有権移転登記では、前述した相続によるものに加え、登記義務者の印鑑証明、(遺言執行者がいる場合は)遺言執行者選任の審判書、遺言者が不動産の所有権を取得したときの登記済権利証(または登記識別情報通知書)といった書類が必要となります。
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